人工授精で妊娠できる確率、回数ごと確率や年齢の影響など、人工授精を検討していると、さまざまな疑問や悩みが出てきます。
人工授精の成功確率を高める方法や、人工授精で起こる可能性があるリスクも含め、人工授精についてまとめました。
人工授精で妊娠できる確率はどれくらい?
年齢は人工授精の成功確率にどれくらい影響を与えるの?
などなど、人工授精を検討していると、このようにさまざまな疑問が湧いてきます。
疑問の答えにたどり着くためにも、まずは年齢や回数ごとの人工授精の成功確率について知っておいたほうがよいです。
人工授精の成功確率について知っていくと、だんだんと成功確率を高めるポイントについてもわかるようになります。
人工授精に成功する確率を、周期(回数)ごとと年齢ごとで確認していきましょう。
人工授精に1回挑戦して妊娠する確率は、5~10%くらいだといわれています。
数字にすると低い確率だと感じるかもしれませんが、人工授精をするのは、タイミングを試して妊娠できなかった不妊症の方がほとんどです。
つまり、人工授精の成功率は、大半が不妊症の方を対象にしているということ。
タイミングを試して妊娠できなかったけれど、人工授精を行えば妊娠する確率が1周期で5~10%になると考えれば、それほど低い確率には感じなくなります。
その後は、人工授精の回数を重ねていくごとに、累計成功率が上昇。
ただし、成功率は年齢や体質や不妊の原因によって異なるので、すべての方に当てはまる確率だとはいえません。
1周期で5~10%というのは、あくまでも平均的な成功確率だということです。
男女共に不妊につながるような問題がない場合は、人工授精を行うと、5回までに90%が妊娠するといわれています。
人工授精を5~6回行っても妊娠しない場合は、卵管因子、受精障害、着床障害など、人工授精に成功できない何らかの問題がある可能性が高いです。
人工授精を5~6回行っても妊娠しなかった場合、それ以上人工授精を続けても妊娠することは難しいでしょう。
その場合は、体外受精など次の治療へのステップアップを検討することになります。
その後の治療については、担当医師の診察に耳を傾け、医師や夫婦でよく話し合って決めていきましょう。
人工授精の成功率は、年齢によっても変わります。
20代は妊娠確率が最も高いです。
20代後半は妊娠する能力のピーク。
若ければ若いほど妊娠しやすいといえます。
20代の場合は、タイミング法を2年くらい試し、それでも妊娠しない場合に人工授精にステップアップするというケースが多いです。
しかし、タイミング法よりも人工授精のほうが妊娠確率は高くなるので、妊娠を強く望むなら、一般的なケースにとらわれず、早めに人工授精にステップアップするのもよいでしょう。
人工授精1周期の成功率は、平均で5~10%だといわれていますが、30代では10~15%、40代以上では2%に一気に下がってしまいます。
現在は晩婚化の傾向にあり、40代で妊娠・出産するということは珍しいことではありません。
しかし、35歳を超えた頃から、妊娠の成功率は徐々に下がっていきます。
そのため、30代後半や40代で不妊に悩んでいるのであれば、早めに不妊治療をはじめることが大切。
さらに、人工授精からのステップアップも早めに検討したほうがよいでしょう。
人工授精に挑戦してもなかなか妊娠しない場合、その原因として考えられる理由はいくつかあります。
年齢を重ねるごとに卵子は老化していき、妊娠しにくくなっていきます。
現在、高齢出産の定義は、35歳以上で第一子を出産すること。
35歳を超えた頃から卵子の老化が進み、人工授精の成功確率も低くなっていくのです。
卵子の老化は、妊娠する可能性が低くなるだけでなく、妊娠を維持して出産まで至る確率も低くなっていきます。
卵子が老化することで、卵子の未成熟や染色体異常などの問題が起こることが人工授精の成功率を低くする原因です。
精子の質が悪いことが原因で、人工授精が成功しないということもあります。
男性の場合も同じく、高齢になると精子の質が悪くなっていくのです。
年齢が上昇するとともに、精液の量・精子の濃度・精子の運動率は低くなり、奇形率は高くなります。
精子の質が悪くなる原因は高齢だけではありません。
ストレスや生活習慣の乱れなど、さまざまなことが原因となり精子の質は悪くなります。
不妊の原因の半分が男性側にあるともいわれているので、人工授精の失敗を繰り返しているのであれば、精子の質が悪いことが原因だという可能性も高いです。
卵管の異常や子宮の状態が悪いことが原因で妊娠できない可能性もあります。
卵管は卵子と精子が出会う重要な場所です。
しかし、卵管が詰まっている卵管閉塞を起こしている、狭くて通りが悪くなる卵管狭窄を起こしている、または卵管采の役割がうまくいっていないピックアップ障害になっていることで、着床まで至らないということがあります。
子宮内膜症を起こしている、子宮筋腫があるなど、子宮の状態が悪いことが原因で人工授精がうまくいかないということも考えられることです。
検査をして子宮に問題があることが判明した場合、症状によってはその治療が優先されます。
治療をするなら症状がひどくなる前に早く行ったほうがよいです。
人工授精は基本的に排卵日に行います。
妊娠できるチャンスが排卵時期に限られているためです。
しかし、人工授精を行った日が排卵時期からずれていたとしたら、妊娠することはできません。
排卵誘発剤を使用せずに自然排卵のみで排卵時期を判断する場合、医師の診察により排卵日を指定して人工授精をしたとしても、排卵日がずれることがあるそうです。
人間は機械ではないので、規則正しく排卵するとは限りません。
しかし、人工授精の日が排卵日からずれているのではと感じることが続いたのであれば、セカンドオピニオンのように、病院を変えてみるのも1つの選択肢として検討しましょう。
人工授精をすることで起こる確率があるリスクがあるということも頭に入れておきましょう。
人工授精では、排卵誘発剤を使用することが多いです。
排卵誘発剤を使用した場合、卵胞の数をコントロールできなくなるので、双子や三つ子などの多児妊娠になる可能性が上がります。
自然妊娠で双子を妊娠する可能性は、約1%です。
排卵誘発で作用の弱い薬(クロミッドなど)を使用した人工授精で双子を妊娠する可能性は、約4~5%。
複数の卵子をできやすくするゴナドトロピン療法という治療を行った場合に双子を妊娠する可能性は、約15~20%になります。
排卵誘発剤には副作用があります。
人工授精で排卵誘発剤を使用することで、たくさんの卵胞が一度に発育し排卵。
そのため、卵巣が過剰に刺激されてしまい、卵巣の腫れが起こるのです。
重症化すると、お腹に水が溜まる腹水を起こしたり、さらに腫れた卵巣が腹水により動きやすくなってねじれてしまう急性腹症を起こすこともあります。
ひどい場合は入院しなければいけなくなることもあるので、排卵誘発剤を使用した人工授精後に、何か体に異変を感じたら、すぐに医師に相談するようにしましょう。
非常に稀にですが、人工授精後は細菌感染を起こすことがあります。
細菌感染のリスクを防止するため、病院によっては人工授精後に抗生剤を処方することもあるのです。
また、細菌感染を防ぐために、医師から人工授精をした当日の入浴を禁止されることがあります。
その他には人工授精後に制限されることはほとんどなく、当日の夫婦生活も制限されないということが多いです。
しかし病院によっては制限される内容が異なるので、医師の話をよく聞いて指示通りに過ごすようにしましょう。
人工授精の治療では、カテーテルという細い管を挿入するのですが、そのカテーテル挿入時に小さな傷ができ、出血することがあります。
出血したとしても、殆どの場合が出血の量は少なく、数日で収まります。
しかし、もし出血量が多い、出血がおさまらないということがあれば、すぐに病院に行き医師に確認してもらいましょう。
人工授精後の出血に関しては、カテーテル挿入時によるものの可能性はありますが、その他に着床出血である可能性もあります。
着床出血であれば妊娠しているということです。
着床出血の症状には個人差があるので、妊娠したらすべての方が出血するということではありません。
人工授精に成功しなかった場合、再び人工授精に挑戦するということになります。
何回も人工授精に成功できないとなると、体外受精にステップアップするという選択肢も出てくることになるでしょう。
人工授精や体外受精などの不妊治療は、保険が適用されないことが多いです。
例えば、人工授精は保険適用外で、1回あたり約2~3万円が目安となります。
体外受精も保険適用外の治療法です。
費用は、卵巣刺激法、培養、胚移植など、どのような治療法により体外受精を行うのかで大きく異なります。
しかし、人工授精よりも料金がぐんと上がって高額な費用が必要になるということは間違いありません。
自治体によっては不妊治療の一部を負担してくれる助成金が出ることがあるので、助成金を上手く活用して、金銭面の負担を少しでも減らしましょう。
人工授精の成功確率を高めるためにできることがあれば実践してみましょう。
病院によって人工授精の成功確率が異なります。
人工授精の成功確率は、周期(回数)によっても異なりますし、年齢によっても異なるのですが、病院によっても異なるということを頭に入れておきましょう。
その理由にはさまざまなことが考えられます。
まずは医師の技術の違いということが考えられますが、技術の違いはおそらく少ないでしょう。
技術よりも、診察の見解の違いということは考えられます。
例えば、排卵日の予測の違いなど。不妊検査をどれくらい行うかでも、成功確率に変化が出ます。
人工授精をむやみに続けるのではなく、不妊の原因をしっかりと探ったほうが妊娠の可能性が高くなることがあるからです。
あとは、排卵誘発を使用するかしないかでも、体質によっては妊娠の確率が変わります。
病院の治療方針はさまざまです。
もし、現在通っている病院の治療に不満を抱いているのであれば、別の病院について調べてみるのもよいでしょう。
人工授精の実績が多く、成功確率が高い病院を選ぶのがおすすめです。
人工授精をする日まで、禁欲期間を長く置いたほうが精子の濃度が高くなって妊娠の成功率が高くなるという噂を耳にした方もいるかもしれませんが、それは違います。
逆に、禁欲期間を置きすぎないほうがよいです。
禁欲期間を長く置きすぎると、精子が酸化ストレスを受けてしまい、精子の運動率が低くなります。
そのため、あまり長く禁欲期間を置かず1~2日程度にしておいたほうが、質の良い精子を採取できるので、妊娠の成功確率も上がります。
人工授精後は、当日であっても夫婦生活の制限をされないことが多いです。
人工授精は予測した排卵日に行います。
そのため、人工授精当日や翌日は、まだ排卵時期ということになり、タイミングをとることで自然妊娠できる可能性があるのです。
病院で夫婦生活の制限をされた場合は、タイミングをとることを控えましょう。
しかし特に制限がない場合は、人工授精で妊娠できる確率に加えてタイミングによって自然妊娠できる確率も出てくるので、より妊娠の確率が上がるということです。
黄体ホルモン(プロゲステロン)を補充することで、高温期を維持して子宮内膜を厚くし、受精卵を着床させやすくします。
排卵が終わると、子宮は着床させやすくするために子宮内膜が厚くなるのですが、黄体ホルモンが不足していると、子宮内膜の厚さが不十分になってしまうのです。
黄体ホルモンの不足分を補充することが、妊娠しやすい体づくりのサポートになります。
ただ、稀にですが黄体ホルモンにより副作用を引き起こすことがあります。
副作用の症状は、下痢、嘔吐、腹痛、食欲低下、発心など。もし黄体ホルモンの薬を服用した後に体調に異変を感じたら、すぐに病院に行きましょう。
人工授精の治療の終了後は、妊娠しやすい体の維持を心がけましょう。
睡眠不足や栄養不足、体の冷えによる血行不良は、妊娠しにくい体をつくってしまう原因になります。
自律神経とホルモンバランスを整え、血行を良くすることが、妊娠しやすい体をつくるためには大切です。
そのためには、夜更かしをせずにしっかりと睡眠をとり、規則正しい生活を送ることが重要。
食生活にも気を配り、栄養バランスのとれた食事を心がけましょう。
さらに、血行を良くして代謝を上げることが妊娠しやすい体づくりにつながるので、腹巻や鍼灸など、体を温める工夫をするのもおすすめです。
人工授精1回目の成功確率は平均で5~10%ほどで、5回までに平均で90%くらいの方が妊娠するといわれています。
しかし、年齢などによって確率は変わるので、平均の数字にとらわれすぎないように注意しましょう。
回数を重ねていくごとに累計の成功確率は高くなるということだけでも知っておくと、1度の失敗で落ち込まず、次の人工授精に向けて前向きに考えられるようになります。
人工授精に成功できない原因はさまざまなことが考えられますが、一方で成功率を高める方法もあるということを知っておきましょう。
そして、何よりもあきらめずにチャレンジすることが大切です。