2018.07.02

「不妊治療にかかるお金」の負担を軽減する方法はある?

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高額なイメージのある不妊治療。

不妊治療は身体的、精神的な負担だけでなく、治療費用という金銭的な負担も伴います。

不妊治療を考えているが、治療費が心配で踏み出せないという方も多いのではないでしょうか。

実際にかかる費用はどのくらいなのか、少しでも軽減する方法はないのかをみていきます。

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不妊治療をしたいけど費用が心配…

そろそろ不妊治療を始めたい、でも不妊治療っていったいいくらぐらいかかるのか…

まず、誰もが最初に不安に感じるポイントですよね。

まずは具体的な治療方法と、その治療ごとにかかる費用の目安から見ていきましょう。

不妊治療の方法

一口に不妊治療と言ってもその種類は多岐にわたり、原因によって治療方法も費用も変わってきます。

ここでは代表的な治療方法と、おおよその費用について説明します。

排卵日を推測するタイミング法

「タイミング法」は、一般的にもっとも初期段階で用いられる方法です。

基礎体温やおりものの状態、、超音波やホルモン検査などで月一回の排卵日を正確に把握し、その日に性交渉をすることで自然妊娠を目指します。

それでもうまくいかない場合や、排卵がない場合、または排卵の状態が良くない場合は排卵誘発剤を併用することも。

6~8か月ほどタイミング法を続け、妊娠しなければ人工授精や体外受精を検討します。

タイミング法の治療では月に一度保険が適用されます。

ただし、超音波検査などを月に複数回受けたり、排卵誘発剤を処方してもらったりすると保険適用外となる場合も多くなります。

費用は一回あたり5,000~10,000円程度です。

自然妊娠を促す人工授精

「人工授精」は、精子を直接子宮内に注入することで、卵子と精子が出会う確率を高める方法です。

女性の排卵の時期に合わせて、採取しておいた精子を管を通して子宮内へ直接注入していきます。

治療名が「人工授精」であるため、人為的に妊娠させるイメージですが、人の手によるほう助は少なく、どちらかと言えば自然妊娠に近い方法といえます。

一回の人工授精で成功する方もいますが、数回に渡る場合もあります。

確率的には、5~20%の成功率と言われており、5~6回の人工授精で妊娠できなければ、次のステップを勧められることが多いようです。

人工授精の費用は保険適用外なので全額実費となり、一回あたり1万~3万円程度。

このほか検査費用などが追加されます。

費用は病院によっても違うので、事前に確認しておくことをおすすめします。

体外で受精培養させる体外受精

「体外受精」とは体内で受精が難しいと考えられる場合に行われる治療法です。

体内から取り出した卵子と精子を体外で受精させ、受精卵になったものを専用の培養液で培養し胚にし、子宮に戻して妊娠を目指す方法です。

胚移植の際に着床に適した環境が整っていないと判断された場合、その周期での胚移植を見送ることも。

その場合、胚を凍結保存しておき、子宮内の環境を整えたうえで凍結胚を融解して胚移植を行います。

体外受精にかかる費用は保険適用外なのですべて実費となります。

胚移植の方法、医療機関などによっても異なりますが、一周期あたり30~50万円はかかると考えておきましょう。

1匹の精子を受精させる顕微授精

体外受精を行っても受精が成立しなかった場合や、男性の精液中の精子濃度や運動率が低く、体外受精を行っても受精しないと判断された場合「顕微授精」という方法があります。

顕微授精は顕微鏡で確認しながら卵子の中に精子を直接注入する方法です。

受精した後は体外受精と同じく、受精卵をある程度成長させてから子宮の中に戻します。

顕微授精の費用は保険適用外のなので全額実費となります。

胚移植の方法、実施する医療機関などによっても異なりますが、卵子に精子を注入する工程に数万円の費用がかかるため体外受精に比べて費用が高くなります。

一回あたり35~70万円程度はかかると考えておいた方がよいでしょう。

良質な卵子を保存する卵子凍結

「卵子凍結」とは、できる限り若いうちに良質な卵子を女性の体内から採取し、体外で凍結保存しておくことです。

がんなどの治療によって卵子が作れなくなってしまう恐れのある女性や、加齢による将来の不妊を心配する女性にとって、若いうちに質の良い卵子を残しておくことで、将来の妊娠に備えることのできる選択肢の一つです。

卵子は年齢が上がるにつれて老化し、染色体の異常や流産などが起こる確率が上がります。

原則39歳以下の方が対象となり、凍結保存した卵子を体外受精などで使うのは45歳未満までとなっています。

卵子凍結保存は保険適用外のため全額実費となり、保存しておく卵子の個数や期間、病院の方針などによって費用は異なります。

また、費用に加え、一年ごとに卵子一個あたり1~2万円の保管料がかかります。

初診からトータルで70~100万円ぐらいかかる可能性もあります。

精子を採取する精巣内精子回収

精巣内精子回収とは、精液中に精子が確認できない無精子症や、重度射精障害の場合に、精巣から直接精子を回収する手術方法のことです。

無精子症とは射出された精液の中に精子が存在しないということであり、かならずしも体内に精子がまったく存在しないというわけではありません。

無精子症は大きく分けて「閉塞性無精子症」と「非閉塞性無精子症」の二つに分類されます。

「閉塞性無精子症」は精巣で精子は作られていますが、精子の通り道(精路)が閉塞されているというもので、この場合、閉塞部位より上流にある精子を回収できる可能性があります。

「非閉塞性無精子症」は精巣の機能が「低下」しているか「無い」状態のことで、もし「低下」している場合であれば精巣内にある精子を回収できれば妊娠を目指すことが可能となります。

そして、回収された精子を用いて顕微授精が行われます。

精巣内精子回収については簡易的な精液検査以外は保険で認められていません。

精子が回収できなかった場合と精子回収できた場合、回収した精子の凍結保存量などにより費用は異なりますが、15~40万円は考えておく必要があります。

不妊治療の負担を減らす「助成金制度」

高額な医療費がかかる不妊治療の経済的負担の軽減を図るため、配偶者間の不妊治療に要する費用の一部に国や自治体などの助成金が利用できるケースがあります。

対象となる治療や給付の内容などを詳しくみていきましょう。

高度生殖医療と一般不妊治療がある

不妊治療は大きく分けて一般不妊治療と高度生殖医療とに分けられています。

一般不妊治療は、重大な問題がないケースで適用される治療法で、主な例としてはタイミング法や人工授精が挙げられます。

一般不妊治療で効果を得られなかった場合、次のステップとして高度生殖医療へ進むことに。高度生殖医療とは配偶子(精子や卵子)や胚(受精卵)を体外で取り扱う治療のことで、体外受精や、顕微授精などがこれにあたります。

各自治体による助成金制度はこの高度生殖医療が助成対象となります。

地域によっては助成金を受けとれる所も

国の厚生労働省が実施している事業に「特定不妊治療助成制度」があります。

特定不妊治療とは高度生殖医療のことです。

47都道府県どこでも受けることができ、全国どこでも同じ方針の制度です。

国の助成金の対象者には所得制限があり、夫婦の合算所得額が730万円未満であることが条件。

また、治療期間の初日における妻の年齢が43歳未満である夫婦であることも条件です。

国とは別に自治体が独自の助成制度を設けている場合があります。

自治体独自のものなので、制度はその自治体によって異なりますので注意しましょう。

年間10万円以上の医療費は医療費控除を受けられる

年間10万円以上の医療費を支払った場合、一定の金額の医療費控除を受けることができます。

一年間に実際に支払った薬代や通院のための交通費の合計が10万円以上であれば医療費控除の対象となり、世帯で合算することが可能です。

控除できる金額の上限は200万円です。

ただし、保険金などで補てんされた場合はその金額を差し引く必要があります。

金額を証明する領収書が必要なので大切に保管しておきましょう。

税務署へ確定申告することで治療費の一部が戻ってきます。

申告し忘れても、5年前までさかのぼって受けることができます。

不妊治療に関する民間の保険もある

不妊治療には高額の費用がかかってしまうことが少なくありません。

時には100万円を超えてしまうことも。

国や自治体の助成制度や、年間10万円以上の医療費に対する医療費控除など利用できるものを見てきましたが、現在は民間の保険でも不妊治療に対する保障が受け取れるものが出てきています。

民間の不妊治療保険の適用範囲はほとんど、費用が大きくかかる体外受精や顕微授精といった特定不妊治療のみです。

免責が2年ある、加入後1年以降の出産なら出産給付金を受け取れる、入院した時や保険契約期間を満了した時に一時金が支払われるなど保険によって保障内容が異なりますので確認が必要です。

不妊治療を続けていくために

不妊治療には精神的、肉体的、金銭的に大きな負担がかかります。

すぐに成果が得られずに治療が長引く場合、その負担はさらに大きなものとなっていきます。

少しでも負担を軽くして納得のいく治療を続けていくにはどうしたらよいのでしょうか。

無理のない治療計画を立てよう

不妊治療は初期段階では自然な妊娠に近い形を目指し、成果を得られなかった場合、徐々にステップアップしていきます。

段階を経るごとにより高度な治療になり、かかるお金も増えるため、肉体的にも金銭的にも負担が大きくなり、精神的にストレスも溜まっていきます。無計画に治療を始めたためにお金が続かないという事態を避けるために、自分たちが無理せずに続けられる治療はどこまでかをよく考え、治療計画を立てることが重要です。

助成金を上手く活用しよう

不妊治療の助成金には国からの助成金と自治体からの助成金があります。

国からの助成金の条件は、

・体外受精や顕微授精でないと妊娠できないと医師から診断されている

・夫婦合算所得(収入から給与所得控除を差し引いた額)が年間730万円以内

・妻の年齢が42歳まで

となっています。

自治体からの助成金の条件は、もらえる金額なども含めて自治体によって異なります。

医療機関は指定されている場合が多いようなので、まずは指定の医療機関へ受診し、治療をどの程度行っていくのかを医者と相談し、夫婦でしっかり話し合うことから始めましょう。

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パートナーと協力し合ってマネープランを立てよう

不妊治療には高額な費用のかかる治療が多く、その金銭的負担は妊活を行ううえで切実な問題となります。

負担を少しでも減らせるようにパートナーと一緒にマネープランを立てるほか、国や自治体の助成金制度、医療費の控除、民間の保険など利用できるものはすべて利用し、ストレスのない不妊治療を行っていきましょう。

妊活部編集スタッフ
この記事のライター 妊活部編集スタッフ

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