人工授精は排卵前に行うことが一般的ですが、排卵後の人工授精でも妊娠する可能性があります。
病院によっては、あえて排卵後に行うケースもあるくらいです。
では、人工授精は排卵後でもうまくいくのでしょうか。
自分自身の排卵時期を見極めて、妊娠につながるベストなタイミングを見つけましょう。
人工授精とは、精子を採取し排卵時期に合わせ、子宮に精子を送り込む方法です。
自然妊娠が難しく、タイミング法を続けても妊娠しなかった場合に、次の手段として提案されることが多い方法です。
排卵の時期に合わせるため、排卵前に精子を送り込むほうが効率は良さそうですが、排卵後でも人工授精により妊娠したというケースがあります。
しかし、どちらにしても正確な排卵時期を把握して、ベストなタイミングを見つけることが大切になってきます。
排卵してしまったあとに人工授精をしても、もう遅いのでは?
と思う方も多いと思いますが、排卵直後であれば、妊娠が成功する理由があります。
排卵前より排卵後のほうが、ベストタイミングの場合があります。
精子は24時間の寿命といわれますが、女性の膣内では48時間から72時間まで寿命が延びます。
一方、卵子は排卵が起きてから24時間が寿命で、そのうち受精可能な時間は、6~7時間ととても限られているのです。
精子を先に送り込み、排卵を待つという方法が多いですが、排卵が確実に確認されたタイミングで精子を直接送り込むことにより、妊娠の可能性が上がるという考え方もあります。
通常の場合、精子は膣から卵管まで移動し、受精するまでに数時間かかります。
人工授精では直接子宮に精子が注入されるため、精子が卵子に到達するまでに15~45分と短くなります。
そのため、ベストタイミングを逃しにくく、排卵後であっても妊娠可能な状態の卵子であれば、人工授精を排卵後に行って妊娠することは可能なのです。
また、排卵している場合には、通常より精子の到達スピードが早まるともいわれています。
排卵しているかどうかは内診で分かりますが、従来の排卵前に人工授精を行う場合は、排卵日をきちんと予測しておくことが大切です。
人工授精は、排卵の時期を見極めることがとても重要です。
排卵をすると個人差はありますが、女性ホルモンの影響で体に変化が現れる方がいます。
生理痛ほどひどくないことがほとんどですが、排卵痛を感じる方もいます。
排卵時期に、下腹部や左右どちらかの腹部に、違和感やちくちくした痛みが生じることがあります。
また、腰全体が重く感じる方も。
排卵痛の原因はさまざまで、排卵時期に卵巣が腫れることによって痛みを感じたり、排卵そのものを敏感に感じ取り、痛みとして出ることがあります。
生理痛はなくても、排卵痛が起こる方もいれば、痛みをまったく感じない方もいるので、これには個人差があります。
痛みを感じやすい場合は、腰やお腹周りを冷やさないようにして、締め付けないよう気をつけましょう。
おりものの変化によっても、排卵時期がわかります。
排卵痛は個人差がありますが、おりものはほぼすべての女性にあてはまり、分かり易い変化といえます。
排卵前にはおりものの量が増えます。
色は透明で、粘度が高いおりものになります。
排卵前から排卵中は、卵の白身に似たおりものが出るので、排卵と気付く場合も多いでしょう。
排卵後には急激に粘度が低くなり、数日でさらさらしたおりものに変化します。
においには変化は感じられませんが、いつもよりおりものの量が増えてにおいが強かったり、何日も続いたりするようであれば、ほかの病気の可能性もあります。
その場合は、婦人科を受診して調べてもらいましょう。
排卵後には、胸の張りを感じる方もいます。
これは、女性ホルモンのプロゲステロンの影響によるものです。
この黄体ホルモンは、妊娠に向けて子宮内膜を厚くしたり、乳腺を発達させたりします。
こちらも個人差はありますが血行が悪いと張りやすく、また痛みを感じやすくなるため、血行を良くすることが大切です。
お風呂などで温め、マッサージを行うと痛みが和らぎます。
また、食生活や冷えにも気を付け、軽めの運動をして、日頃から血行を良くしましょう。
万が一、痛みが強い場合は、その期間だけはあまり締め付けないように、スポーツブラやワイヤーなしの下着に変えると、痛みが和らぎます。
眠気や体のだるさも、排卵後の女性ホルモンのプロゲステロンの分泌によって起こりやすくなります。
女性ホルモンの影響は、食生活や生活習慣によって緩和させることも可能です。
あまりにも眠気やだるさがひどいときは、甘いものの摂取を控え、野菜中心の食事がおすすめです。
糖分やカフェインは冷えを引き起こし、女性ホルモンに悪影響をあたえやすいので注意しましょう。
夜の睡眠を十分にとると、ホルモンバランスが整いやすくなりますので、早めに寝ることも大切です。
女性ホルモンの影響は、排卵中だけではなく、生理開始まで続く方もいます。
あまりにもひどい場合は、PMSという診断がつけられることもありますので、婦人科に相談しましょう。
排卵したかどうかをより正確に知るためにはいくつかの方法があります。
妊活前でも人工授精を行う場合も、排卵日を正確に予測して妊娠にうまくつなげましょう。
基礎体温は、朝活動前の布団に入った状態で、毎日同じ時間に計ることが大切です。基礎体温計は、小数点まで計れる体温計です。
毎日の体温を細かくグラフ化し、数カ月記録することで、排卵日や生理予定日などがわかりやすくなります。
生理開始日に体温が下がって低温期が続き、がくっと下がった日が排卵日に近いといわれています。
排卵日を境に体温は上昇して、高温期が続きます。
グラフがうまく低温期と高温期に分かれない場合は、ホルモンバランスが乱れています。
自分のリズムを知るためには、数カ月は基礎体温をつけ続けることが基本です。
サイクルを知ることで、妊娠しやすい日を把握しましょう。
超音波検査とは、婦人科などで受ける内診のことです。
細長い超音波の機械を膣の中に入れ、子宮や卵巣の状態を、モニターで確認できます。
医師との間はカーテンで仕切られていて、イスに座ると自動で足が開きます。
この検査では痛みはほとんどありません。
排卵が近づくと、卵胞が20mm程度の大きさになり、医師であれば排卵前か排卵後か、いつ頃排卵かなど詳しいことがわかります。
人工授精を行う前には、必ず内診があります。
タイミング法をおこなう場合も、いつタイミングを計るかについて、的確にアドバイスしてもらえます。
子宮や卵巣の病気の有無なども、超音波検査でわかりますので、超音波検査は定期的に行いましょう。
近年では、排卵を自宅で気軽に調べられる、排卵検査薬の種類が増え、さまざまなタイプが市販されています。
おもに尿で検査するタイプや、唾液で検査するタイプがあります。
基礎体温計と併用して使い、まず数カ月の基礎体温からおおよその排卵時期を調べ、排卵予定日の4~5日前から毎日1回同じ時間に測定していきます。
尿の検査では、LH濃度が濃くなれば陽性になるので、検査薬に陽性反応が出て、48時間以内に排卵すると予測できます。
尿検査での測定は使い捨てなので、費用がかかってしまいますが、唾液より正確だといわれています。
病院に行く前に、自分で手軽に排卵時期を調べたい場合には、検査薬を使って調べてみるとよいでしょう。
血液検査でホルモン値を調べ、排卵日を予測するという方法もあります。
血液検査でのホルモン値は、更年期などの治療の目安で行われることが多くなります。
排卵時期を調べる際により正確さを出すため、内診と合わせて行われることもあります。
病院により月に数回行うこともあれば、排卵時期だけのこともあり、血液検査をあまり行わないこともあります。
より正確に調べたい場合は、検査をしてもらってもよいでしょう。
おもにE2でエストロゲンの数値、P4でプロゲステロンの数値を確認し、LHの数値が排卵の48~72時間前に上昇するのでこれらの数値の確認をします。
排卵日は1カ月にたった1回ですが、おおよその排卵時期を特定しタイミングがうまく合えば、妊娠により近づけられます。
排卵してしまったあとでも、直後であれば十分に妊娠の可能性はあります。
日々の食生活や睡眠に気を付けながら、基礎体温計でのチェックをかかさずに行い、信頼できる病院に相談しましょう。
人工授精の時期や方法も、病院によってさまざまです。
諦めず前向きに、嬉しい結果を待ちましょう。