2018.06.28

体外受精のリスクとは?高齢出産はリスクが高まるの?

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自然妊娠が困難の時は体外受精を行うときがあります。

心配なのは体外受精を受ける時のリスク。

体外受精に限らず、高齢出産でも妊娠や出産にはリスクが伴います。

体外受精や高齢出産のリスクを知っていると、リスクが上がる前に治療することが出来ます。

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妊娠と出産にはリスクがつきもの

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どんな妊娠にも、どんな出産にもリスクがあります。

体の中に新しい生命を宿し、それを10カ月間お腹の中で育てます。

ハイリスクではない自然妊娠でも、妊娠高血圧症にかかることや、生まれるときにうまく行かず、赤ちゃんに障害が残ってしまったり、母体が危険な状態になることもあります。

高齢出産だと、なおさらリスクは高まり、染色体異常の赤ちゃんが生まれてくる可能性もあります。

体外受精のスケジュール・流れ

まずはリスクを知る前に、体外受精のスケジュールと流れを見ていきましょう。

1. まずは排卵誘発を行う

まず低温期に妊娠の確率を上げるための排卵誘発剤により、排卵刺激を行い卵胞を複数発育させて卵子を複数発育させる方法です。

飲み薬と注射のホルモン薬でより排卵をコントロールします。

注射の種類や投与の仕方は個人によって異なります。

卵巣刺激法には調節卵巣刺激法、低刺激法、エストロゲン補充法、完全自然周期法があります。

調節卵巣刺激法には、アンタゴニスト法とショート法、ロング法などがあります。

● 調節卵巣刺激法

刺激周期は、月経から採卵までの間で、毎日ホルモン剤を注射します。

この方法は、排卵誘発により多くの採卵ができ、凍結卵が沢山つくれます。

発育の卵胞数をコントロールしやすいという利点があります。

そのため、何回も移植ができるので妊娠の可能性が高まります。

デメリットは注射を毎日打つため、精神的にも身体的にも負担がかかります。

卵巣過剰刺激症候群になる可能性があります。

時には入院して加療することや血栓症ができることがあります。

● 低刺激法

卵巣機能がかなり低下している人以外の人に行う卵巣刺激法です。

調節卵巣刺激法に比べて、注射の回数が少ないので体の負担が少ないです。

完全自然周期よりは採卵が多いため、受精卵を得られる確率が高くなります。

しかし、調節卵巣刺激法に比べて採卵がすくないため、受精卵が得られる確率が少なく、凍結卵が得られないということもあり、再度の採卵が必要となる可能性があります。

● エストロゲン補充法

卵巣期機能の低下している人に用いる卵巣刺激法です。

体内ホルモンのバランスをまず調節し、卵胞ホルモンであるエストロゲンを補充します。

体のエストロゲンが増えてくるので、完全自然周期よりは排卵が得やすくなります。

● 完全自然周期法

これは、排卵誘発剤を用いない方法ですが、卵巣機能が低く、調卵巣節刺激や低刺激法でも妊娠しなかった場合に行います。

自然のままの方法なので、毎月採卵できて、身体的な負担や精神的な負担がありません。

卵胞が1個しかないので、採卵しても卵子が出来ないなどの可能性があります。

2. 採卵と採精を行う

次に、採卵と採精を行います。

● 採卵

排卵前まで成長させてから、卵胞の成長を超音波や血液検査で確認しながら採卵する日を決めます。

採卵できるようにする薬を用いて36時間後に採卵します。

卵胞にを採卵針を指して、吸引して卵子を取り出します。

● 採精

精子を取り出すことは一般にクリニックで行いますが、クリニックだとストレスがかかる人は自宅で採精します。

自宅で行う場合は注意が必要で、光に弱いので遮光して容器に直接射出します。

温度変化に弱いので、寒い時はタオルでくるむなどしてクリニックへ持ち込みます。

3. 卵子と精子を受精し培養する

採取した精液の中で元気な精子を取り出し、培養液の中にある卵子と一緒にして受精卵にします。

4. 受精卵を胚移植する

受精卵は培養液の中で受精胚となります。

その受精胚を子宮へ移植するのです。

受精胚は受精後2,3日の間に行う方法と、5日ほど培養して子宮へ移植する方法とどちらかを選びます。

5~6日培養され生きてきた胚は、非常に生命力が高いため、受精後、2~3日しか立っていない胚より、妊娠と出産できる可能性が高いです。

5. 黄体ホルモンの補充をする

胚を子宮に移植して、黄体ホルモン(プロゲステロン)を補充することで着床率を上げることができます。

黄体ホルモンは、子宮内を整えて、子宮内膜の状態もいい状態にして、胚が成長するように助ける役割りをしています。

そのため、妊娠中は黄体ホルモンの分泌によって黄体機能を充実させることが大切です。

6. 妊娠判定を行う

その後、妊娠しているかどうかの判定を尿検査や血液検査で行います。

● 尿検査

尿検査は、尿中の「HCG」というホルモン値を測定します。尿検査では妊娠しているかどうかが分かるのは、ある程度日数が経過しないと判定が出ません。早く検査すると、妊娠していても陰性になる場合があります。

● 血液検査

血液検査は尿検査より早く妊娠しているかどうかがわかり、正確です。

血液検査でも「HCG」というホルモン値を測定します。

体外受精のリスク

採卵で出血の可能性がある

採卵の場合は、一般に膣から採卵針を刺して行います。

卵巣穿刺(らんそうせんし)を行うので多少の痛みがあります。

麻酔は体外受精の方法によって全員麻酔や局所麻酔、スプレー麻酔のいずれかを使って行います。

● 全身麻酔

全身麻酔は静脈に点滴で麻酔薬を入れる方法です。

全身麻酔は全く意識がなくなるので、採卵の時の痛みは全くありません。

採卵する数が多い排卵誘発法や痛みにかなり敏感な人にのみ用います。

● 局所麻酔

神経に麻酔薬を注射して、採卵時の痛みだけ感じなくする方法です。

局所麻酔では意識があるので、採卵されていることがはっきりとわかります。

● スプレー麻酔

麻酔薬をスプレーで吹きかける方法で数個の採卵ができる低刺激法を使った場合に用いられます。

● 採卵時に起きる出血

採卵時には超音波を見ながら採卵を行いますが、採卵の時に菌が入り感染症になることや、お腹に血液がたまる腹腔内出血、膀胱から卵胞穿刺を行った場合には膀胱出血がおこる可能性があります。

また、腸を傷つける可能性もあります。

自然妊娠に比べて流産率が高い

体外受精には流産のリスクが伴います。

自然妊娠では約15%の流産率ですが、体外受精は妊娠しても流産のリスクは高いです。

また、子宮内に胚を移植しているのに子宮外妊娠をする場合があります。

体外受精は、肉体的な負担や精神的な負担が大きく治療費が高額になります。

多胎妊娠率が上がる

一般に双子や三つ子ができる確率は自然妊娠の場合は0.2~0.4%だと言われています。

体外受精では妊娠率を高めるために、受精卵を2個以上子宮へ移植する二段階移植法が行われた結果、多胎妊娠が起きました。

2008年にに日本産婦人学会で体外受精は受精卵1個のみと決められたため、二卵性の双子を妊娠する確率が4%まで下がってきています。

卵巣が腫れる「卵巣過剰刺激症候群」

体外受精をするリスクの1つに卵巣が腫れる卵巣過剰症候群があります。

排卵誘発剤を使用するので、採卵した後に卵胞が腫れて水がたまり卵巣自体が大きくなります。

血液中の水分がなくなるので体調が悪くなります。

そのままにしておくと母体の危険性もでてきます。

高齢妊娠と出産のリスク

ダウン症の発症率が上がる

ダウン症の発症率は高齢出産のほうが高くなります。

高齢出産とは、世界婦人科連合(FIGO)がだしている年齢では、初産婦では35歳以上、経産婦では40歳以上での妊娠・出産とされています。

出産を経験している経産婦の産道は、柔らかく子宮口が開きやすいので、赤ちゃんが降りやすくなり、出産時間が短くて済むため、経産婦の場合は40歳となっています。

ダウン症とは、染色体異常のためになった病気で、生まれながらに21番や18番染色体に異常がある病気です。

通常は21番染色体は2本しかないのですが、ダウン症の場合は3本あります。

21番染色体異常のダウン症が9割を占めています。

それ以外に、染色体の一部が他の染色体と結合した転座型、正常な染色体細胞と異形細胞が混ざったモザイク型などのダウン症があります。

流産のリスクが上昇する

高齢出産で卵の遺伝子異常がある場合は、流産のリスクが上がります。

遺伝子異常や染色体異常の卵の場合は、着床しても自然に出産する人はわずか20~30%で流産する可能性が高くなります。

そのため、日本では日本産科婦人科学会の指針で「デュシェンヌ型筋ジストロフィー」「筋強直性ジストロフィー」「Leigh脳症」「ミトコンドリア病」などといった重い遺伝性疾患を持つ人を対象に着床前診断が行われています。

染色体異常の場合は、18番染色体異常や21番染色体異常が多いですが、18番染色体異常では受精卵の98%が流産となり、21番染色体異常の場合は80%ほどが流産となると言われています。

妊娠中と分娩時のリスクが上がる

● 妊娠高血圧症候群

妊娠高血圧症候群とは以前は、妊娠中毒症とよばれていました。

妊娠20週以降に高血圧になります。

この妊娠高血圧症候群は産後12週までに普通の血圧に戻ります。

この病気になると、母体や胎児に悪影響を与えます。

この病気になると、胎児の発育が不全となり低体重児が生まれる可能性があります。

また、酸欠になり脳への影響があることもあります。

さらに胎児の命に関わることもあるので、帝王切開をしなくてはならないこともあるのです。

母体にも影響があり、子宮のけいれんや血液中の赤血球が壊れてしまい、血小板が減少することにもなります。

胎盤が早期に剥離してしまうこともある怖い病気です。

● 妊娠糖尿病

妊娠糖尿病は妊娠中に起こる糖尿病で、出産後は血糖値が戻ることが多いです。

妊娠するまでは糖尿病ではない人でも発症することがあります。

食事後は血糖値が高くなるため、インスリンが分泌され血糖値をさげます。

妊娠中は胎盤からでるホルモンがインスリンの働きを弱めてしまい、血糖値が高くなるために妊娠糖尿病になると言われています。

高齢出産や肥満の人、家族に糖尿病の人がいる場合は妊娠糖尿病になりやすく、妊娠高血圧症の合併症や流産、早産のリスク、神経障害や網膜症などの合併症を引き起こす恐れがあります。

胎児には発育不全や巨大児、胎児機能不全、子宮内胎児死亡などになる恐れがあり、先天奇形や羊水過多症になる場合もあります。

● 難産で帝王切開になるリスクがある

高齢になると、難産になりやすく、陣痛があっても赤ちゃんや胎盤が出てこないという状況になりやすいです。

それは、産道や周辺の血管が固くなり、うまく子宮口まで出てこないためです。

高齢出産の時は陣痛が弱くて赤ちゃんが出にくい場合もあります。

そのため、高齢の初産は時間が相当かかる場合は、母体や赤ちゃんの危険を考えて緊急帝王切開になる場合があります。

高齢出産でも若い時の出産と変わらず自然分娩で生まれた人もいるので個人差はありますが、高齢出産の方が帝王切開になるリスクが高くなります。

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早めに治療をしてリスクを最小限に

どんな妊娠もリスクはつきものですが、特に体外受精と高齢出産は妊娠や分娩のリスクが高くなります。

体外受精では、採卵で出血があったり、流産する率や多胎妊娠する率が高くなります。

卵巣過剰刺激症候群もなる可能性があります。

高齢出産のリスクは、ダウン症の発症率が上がり流産の率も上がります。

妊娠高血圧症候群や妊娠糖尿病、難産などのリスクが伴います。

リスクを抑えるために、早めに治療してそのようなリスクを最小限にしたいですね。

妊活部編集スタッフ
この記事のライター 妊活部編集スタッフ

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