自然妊娠でも体外受精による妊娠でも、一定の確率で流産することがあります。
流産する時期も理由もさまざまです。
自然現象による部分も大きく、すべての流産は防げません。
どのような理由があるのかを知り、次に向けて前向きに治療に取り組みましょう。
体外受精を行ない、せっかく胚が子宮に着床しても胎児が育つことなく流産してしまうことがあります。
これを化学流産といいます。
このように妊娠初期に起こる化学流産のほとんどが、染色体異常などの胎児側に原因があることが多く、流産のすべてを防ぐことはできません。
そして、同じケースは自然妊娠でも同じ割合で起こります。
しかし、流産の原因はさまざまで、母体に原因がある場合には治療しないと妊娠継続が難しい場合もあります。
体外受精で流産してしまう原因にはどのようなものがあるのか、年齢によりどのように流産率は変化していくのか、この記事では流産について知りたい方のために情報をまとめています。
体外受精で流産する理由はさまざまで、胎児に問題がある場合もあれば、母体に問題があるような場合もあります。
体外受精で流産する理由についてみていきましょう。
子宮は受精卵が着床する場所で、いわば赤ちゃんのベッドになるところです。
通常ならエストロゲンやプロゲステロンといったホルモンの影響で、子宮の内膜は厚くなっていき、着床しやすい環境が整います。
着床しやすいのは子宮内膜が8ミリくらいだと言われます。
しかし、なんらかの影響で体外受精をしたときにそこまで子宮内膜が厚くなっていないと、胚は定着しません。
ただし、ほとんどのクリニックでは、胚移植の前に検査をして厚さが足りなければ、その時は胚移植をせずに次回に持ち越します。
このように、着床しやすい環境を整えることは大切です。
他にも子宮内膜症や子宮筋腫、子宮内ポリープなどの可能性が。
それらも子宮や卵管の状態を悪くする要因であり、事前にわかっているようならば事前に治療しましょう。
どんなに外見が若くみえても、卵子や精子は年齢と共に老化して質が低下していきます。
特に卵子というのは、生まれたときに作られ、生理とともに少しずつ数を減らしていきます。
そして、質のよい卵子から順番に失われていってしまうのです。
そのため35歳を越えて高齢出産になってくると、子どもがうまれる割合は16.8%、40歳で8.1%です。
仕事やプライベートを重視して、適齢期の頃に避妊。
そしてようやく子どもを作ろうかと思ったときに、卵子の老化などにより不妊に苦しむケースが昨今では増えています。
卵子が老化していると、染色体や構造異常により受精卵まで育たなかったり、体外受精により着床してもその後、流産してしまう確率が高くなります。
不育症とは、妊娠するけれど流産を繰り返すことをいいます。
不育症の検査を進められる流産としては、3回以上流産をする習慣流産、流産を連続で2回繰り返す反復流産などがあります。
習慣流産には、原発性習慣流産といって子どもが一人も授からないケースと、続発性習慣流産といって1人以上子どもを授かった後、流産を繰り返してそれ以上子どもができないケースがあります。
そのため一度子どもを産んだからといって、安心は出来ません。
不育症の原因となるのは、子宮形態の異常や、甲状腺異常、両親どちらかの染色体異常などさまざまな要因が挙げられます。
不育症と診断されても妊娠出産している人は大勢います。
診断結果が逆にストレスとなることがないように、前向きに治療に取り組みましょう。
妊娠初期の流産は、胚の染色体に異常があるなど胎児側に問題がある場合がほとんどです。
染色体に異常がある胚は、妊娠4週~5週くらいでたいてい流産してしまいます。
たとえグレードの良い胚だったとしても、それはあくまで見た目の問題です。
グレードが良いからといって、構造異常や染色体異常がないわけではありません。
また、受精卵の染色体異常などにより、着床後すぐに起きてしまう流産は化学流産といわれ、ほとんどが胎児の問題です。
日本では胎嚢が確認できたあとの流産を流産としてカウントし、胎嚢が確認できる前の流産を化学流産として区別しています。
体外受精をしている場合は、血液検査や尿検査で陽性反応が出ているので、化学流産に気がついてしまいます。
しかし、自然妊娠の場合はちょっと重い生理だったくらいにしか思わず、化学流産に気づかず終わることも多いのです。
流産は妊婦の7~10人に1人の割合で発生し、その9割以上が妊娠12週未満の早期流産です。
化学流産を含む早期流産のほとんどは、胎児側が原因だといわれています。
年齢と共に、流産の確立はあがります。体外受精の年齢別の流産確率をまとめてみました。
体外受精の20代での流産率は約16%。
妊娠の確率が約42%、出産確率は約20%です。
20代の流産率を低いととらえるか、多いととらえるのかは人それぞれです。
それでも20代で8人に1人が流産していること考えると、流産自体はよくあることといえるでしょう。
受精卵の染色体異常を調べてみても、20代でも半数以上に異常がみられます。
そして、染色体に異常があればほとんどの場合は正常に育たず発育を停止し、着床しても流産してしまうのです。
また、自然妊娠と体外受精を比べた場合ですが、20代では3~4%程度、体外受精のほうが流産率は高めのようです。
体外受精の30代での流産率は約19%です。
30代前半の流産率は約19%、高齢出産に入る35歳で約20%、そして30代後半では約27%まで流産率は上がります。
卵子は生まれたときから数が決まっていて、良質の卵から失われていきます。
しかし、社会では妊娠確率の高い20代は仕事やプライベートが忙しく、避妊する人も増えています。
そして30代になり子どもを作ろうとして、妊娠確率の低下と、流産率の上昇という壁に当たってしまうのです。
高度生殖医療では、自然妊娠と比べて若干流産率は高いですが、妊娠確率は高くなります。
流産をしたとしても、まだ前向きに治療に取り組めるのが30代です。
40歳の流産確率は約35%です。しかし、それは40題前半の数字で、40代後半では約67%にまであがります。
そのため40代になってからの体外受精は、スピード勝負ともいえるかもしれません。
40代では、体外受精をすると20%の確率で妊娠はしますが、40%くらいかそれ以上の確率で流産もしています。
また、年齢が高くなると、流産だけではなく、せっかく生まれてきても障害が出る可能性も高くなります。
40代になってから妊活をする場合は、少しでも早く始めてください。
体外受精後、もしも流産してしまったらどのように心をケアすればよいのでしょうか。
気持ちをリフレッシュし、もう一度前向きに治療と向き合うための方法をいくつかみていきましょう。
辛い不妊治療を乗り越えて、せっかく陽性反応を得たそのときの喜び。
それが流産で一気に谷底に落とされてしまいます。
その辛さは経験した人でないとわからないでしょう。
ふとしたときに涙が流れたり、妊娠のことばかり考えてしまうようになるかもしれません。
しかし、妊娠ことを考えてばかりいると、それがストレスとなって不妊治療に悪影響を及ぼす場合があります。
また夫婦生活が楽しいものではなくなる可能性も。
もしも辛いならば不妊治療はしばらくお休みして、妊娠を意識しない夫婦生活をしばらく送ってみてはいかがでしょうか。
このようになんの意識もせずに、治療を休止したときに自然妊娠する夫婦も大勢います。
辛い経験から立ち直れない1つの原因は、毎日同じ繰り返しの中で、思考回路もマイナスの状態から抜け出せなくなっていることが上げられます。
思い切って仕事や治療を休み、旅行へ行くことを考えてみてはいかがでしょうか。
旅行に行くとなれば、どこに行くのか、どんな宿に泊まるのか、何日くらい宿泊するのかなど決めなければならないことが盛りだくさんです。
しかもそれらは、創造的で前向きな計画。
そのことを考えている間だけでも流産のことは忘れられます。
また実際に旅行に行くことにより、気持ちをリフレッシュできます。
たまっていたストレスを解消し「また、次の治療を頑張るぞ」と思えるかもしれません。
もしも治療方法を不安に思うのならば、そのことを思い切って担当の医師に話してみるのもよいでしょう。
優れた医師ならば、嫌な顔一つせずにしっかりとカウンセリングをしてくれるはずです。
同じ方法でも、個人個人によって適した治療方法が異なります。
誘発方法の変更をするだけで、異なる結果を導き出せるかもしれません。
ただし、やはり専門知識を多く持っているのは誰でもない医師です。
医師の意見にもしっかり耳を傾け、より最善の方法を探っていきましょう。
流産をしたときのショックは、経験したものでないとわかりません。
お腹に一度宿った命を失うというのは、夫にも理解できないことなのです。
しかし、落ち込んでばかりはいられません。
体のタイムリミットは刻一刻と時間を刻んでいます。
治療再開できるよう、まずは心のケアをしましょう。
一時的に治療を休んでみるのもひとつです。
前向きに治療に取り組める気持ちになったとき、それが次の治療をスタートするタイミングです。