体外受精をしようと考えている場合、一連の流れを知ることによって不安に思っていることが少しでも解消され、ストレスを回避し体外受精に臨むことができます。
さらに普段の生活においても、ちょっとした注意をすることで自然に妊娠に備えることができます。
この記事では、体外受精から着床までの流れと、着床確立を高めるポイントなど詳しく解説していきます。
年齢が上がるほど低くなる体外受精の着床率女性の年齢が上がるにつれ、受精卵の着床率は下がってしまいます。
これは卵子の老化が原因になります。
また、流産率も高くなってしまうのが現状です。
体外受精を考えるにあたってデリケートな問題ですが成功させるために、早いタイミングでの決断がカギとなることを覚えておきましょう。
着床に至るまでどのような過程があるのか気になるところです。それぞれのタイミングやかかる日数そして着床時に現れる体の変化とはどのようなものなのでしょう。
体外受精を行う前に卵子と精子を取り出す作業があります。
卵子を取り出すには採卵用の針を子宮の中に入れて超音波で確認をしながら状態のよい卵子を見極めて吸い取り出します。
そして同じくらいのタイミングで男性の体の中から精子を取り出し、卵子を培養液の中に入れ、運動能力の高い精子を振りかけて自然に受精をするのを待ちます。
ただ、自然に受精するのが困難な場合には、精子を人工的に卵子に入れる「顕微鏡授精」という方法もあります。
受精卵を培養すると12時間程で細胞の分裂が始まります。
この培養して細胞分裂を始めた受精卵を胚と呼び、だいたい2日で4細胞胚、3日で8細胞杯に分割します。
分割した胚の細胞の1つ1つが均等で破損の少ない、形の綺麗な受精卵を選びます。
そうすることによって着床率を上げられることができると考えられます。
ちなみに選ぶときの基準として1から5段階に評価をされます。
グレードといういい方で表現され数字の低い方がよしとされます。
そのためグレード1が一番よいことになります。
この条件と合わせて胚の分割スピードの速い方が優先的に選ばれます。
培養液を使用して機械で胚を培養させて分裂が始まるのを待ちます。
そして分割した胚を移植することになります。
移植の方法については主に初期胚細胞移植と胚盤胞移植の2つに分けられます。
どちらも成長した胚を子宮内に移植するのですが、初期胚細胞移植は2、3日胚を培養させて分裂が確認された時点の早い段階で移植します。
一方胚盤胞移植は、5~6日胚を培養させて胚盤胞と呼ばれる着床寸前まで成熟させた胚を移植します。
他に二段階胚移植という方法もあり、初期胚細胞を最初に移植して胚が着床しやすい環境を整えておいてから何日か後に胚盤胞も移植し着床率を少しでも上げる方法もあります。
ただし、二段階胚移植は少し注意が必要です。
最初の初期胚も着床することがあるので多胎妊娠の可能性が高くなってしまいます。
受精卵を子宮に移植してから着床するまでにはだいたい3日から5日くらいかかります。
さらに妊娠したことを正しく判定できるようになるには2、3週間程かかることもあります。
判定は尿検査または採血によって行われ、妊娠すると分泌されるhCGホルモン(妊娠ホルモン)が確認されると着床に成功して妊娠をしてるということになります。
ですが、1週間前後のごく初期段階で体にさまざまな変化を感じ取る人もいます。
例えば、着床痛といってお腹の下の方に生理痛に似た鈍い痛みを感じたり、胸が張って痛みを感じたり、受精卵が着床するときに起こる少量の出血(着床出血)、風邪のときの症状のように、熱っぽく感じたり体がだるかったりと、人によって感じ方は違いますが、これらは着床時によくある症状です。
何度挑戦しても着床に至らない場合なんらかの原因があることも考えられます。
原因によっては解決の糸口が見つかるかもしれないのです。
質のよい受精卵を移植しても着床をせずにそれを何回も繰り返してしまうことを着床障害といいます。
原因を特定することは非常に難しいとされていますが、原因のわかるものについては治療が可能な場合もあります。
主に治療が可能なものとして、よく知られているのは母体側の子宮筋腫や子宮内膜ポリープです。
どちらもできる位置や大きさによって子宮を圧迫して着床の妨げになっていることがあります。
このような場合には手術で取り除く必要がある場合もあります。
また、黄体ホルモンの分泌不足ということも考えられます。
他には子宮の形に問題があり着床することができない子宮奇形という場合もありますが、こちらも手術をして着床に問題のない子宮の形に戻すことが可能です。
母体ではなく胚の方に問題がある場合もあり、こちらは染色体の異常であることが多く治療をすることはできません。
無事に着床しても、胎児が育つことなく流産してしまったり死産になってしまったりという状態が繰り返される場合、不育症であることがあります。
その原因についてはさまざまで、胎児の染色体の異常、または母体の染色体の異常であることも考えられ、今のところ胎児側の問題については対処の方法がないのが現状です。
しかし、母体側に問題がある場合には検査をすることによって治療をして解決する場合もあります。
もう一つの原因としてストレスも関わってきます。
ストレスが溜まることによってホルモンのバランスも崩れてしまい、子宮の内膜の環境も悪くなり流産に繋がってしまうこともあります。
規則正しい生活を心がけることが大切です。
女性が年齢を重ねることで同時に卵子も年齢を重ね老化してしまいます。
卵子が老化してしまうと胚の分裂がうまくできずに、胚になることができなかったり、均一に分割ができず染色体の異常を引き起こして受精しても細胞の分裂に失敗をしてしまい着床まで至らなかったり、仮に着床しても育つことができないといったことも起こることがあります。
もちろん全員ということはありませんが、こういった確率が高くなってしまうことも知っておく必要があります。
着床を成功させるために、自分自身でできることもありますが、あまり神経質にならずお薬を頼ることも必要です。
体外受精において、一連の流れのすべてにおいて深い関わりを持つのが黄体ホルモン(プロゲステロン)で女性ホルモンの一種です。
排卵の直後から卵巣で作り出され、受精卵が着床しやすいように子宮の内膜を厚くしてくれたり、着床した後も妊娠が継続している限り黄体ホルモンは増え続け、子宮の内膜の環境を整えて流産の危険を避けて胎児が育ちやすいように手助けをしてくれます。
このように重大な役割を担っているのが黄体ホルモンなのです。
しかし黄体ホルモンの分泌される量が極端に少ない場合、黄体機能不全の可能性もあります。
そうした場合には不妊の原因や妊娠の継続ができずに流産してしまうこともあるため、投与して補うことになります。
投与の仕方については何種類かあります。
飲み薬の服用や注射、他には膣内に挿入する膣座薬があります。
またホルモンの分泌の向上には食生活の見直しやノンストレスであることも重要です。
避妊のために使用されることの多いピルですが、体外受精でもピルを服用することがあります。
身体を妊娠時に近い状態にして排卵を抑えるのです。
こうすることによって未熟な卵子を成熟させ卵子の質を上げることができ卵巣も休ませてあげることができます。
採卵の後にもピルを服用する場合があります。
受精卵に良い子宮環境の整備のためです。
ピルにはエストロゲンという女性ホルモンが含まれていてこのエストロゲンが不足してしまうと子宮が硬いままの状態であったり、子宮内膜が剥がれやすくなって流産を引き起こす可能性もあります。
ピルを使用することでこのエストロゲンを補給して妊娠の継続をしやすいようにします。
しかし、長く飲み続けると悪影響もでてきます。
タイミングや飲む期間は医師と十分に相談する必要があります。
普段の食事から妊娠しやすく、妊娠を継続するための体作りをしておくことが大切です。
主食に加え肉、魚、卵、大豆、大豆製品をバランスよく摂取して暴飲暴食やジャンクフードはできるだけ避けましょう。
また過度なダイエットもよくありません。
バランスのよい食事を心がけることで栄養の吸収もしやすくなり、ホルモンの分泌も促されます。
それによって健康的で妊娠しやすい体に自然に近づいてき、着床後には胎児にもよい環境で妊娠を継続することができます。
ちなみにアーモンド、落花生、カボチャ、ホウレン草、アボカド、ウナギ、エビ、鮭、緑茶などは卵子の質を上げてくれるのに有効な抗酸化作用が含まれている食材なので、積極的に摂ることをおすすめしますが、摂り過ぎには注意をしましょう。
体外受精の後の過ごし方も気になるところですが、何ごとも普段通りがいちばんです。
あれこれ気にしていてもストレスをため込むだけで、体に負担がかかりよいこととは言えなくなってしまいます。
規則正しく適度に体を動かしたり、音楽を聴いたり、気分をリフレッシュするのもよい方法です。
とはいえ気をつけなければいけないこともあります。
体を冷やすことはあまりよくありません。体が冷えると血流も悪くなり妊娠をしずらくなることもあります。
特にお腹周りは温める事を意識してゆったりとストレスを抱えずに過ごすことが大切です。